幽玄な美の世界へ誘う「光」の花器

透き通るような色彩に包まれて、淡い輝きを静かに放つ「光」の花瓶――。

作者の板谷波山は、明治五年に茨城県下館市(今の筑西市)に生まれ、やがて陶芸の世界へ入ると、東洋の伝統的な器に彫刻技術や西洋のアールヌーヴォー様式を取り入れ、東西の美を融合させた独創的な作品を次々に生み出しました。昭和二十八年には、陶芸家として初めて文化勲章を受章。明主様も「明治以来の名人としては、なんといっても波山です」と述べられています。

本作は、中国の故事にある「比翼の鳥」「連理の枝」「合歓綢繆」の文様を、日本の伝統的な吉祥文様である青海波でつないだ花瓶です。波山は、自ら「葆光」と命名した釉薬技法を用いて、薄い絹を透かしたような色合いと質感を作品にもたせました。

葆光という言葉の起原は、中国の荘子の斉物論にあり、「いくら注ぎこんでも溢れることがなく、いくら汲み出しても無くならない、内に秘められた光」「己の徳や知恵を包み隠すこと」などの意味があります。「形のない光の表現」を大きなテーマとしていた波山は、これみよがしな彩色をせず、あえて作品の艶を消すことで「美しさをひけらかさない美しさ」を表現しようとしたのかもしれません。

波山は、郷里の80歳を迎えた全員に鳩杖を作って贈呈した他、第二次世界大戦の戦没者遺族に観音像を贈るなど、人の心に寄り添い、芸術を通して社会に貢献してきました。そうした温かい心と比類ない芸術性が相結び、今も人々を魅了する作品が生まれたのです。

葆光彩磁和合文花瓶

葆光彩磁和合文花瓶

 

上記の作品は、MOA美術館で2015年1月1日(元旦)~2月1日(日)まで開催している「新春を寿ぐ 近代日本美術展」でご覧いただけます。
 その他にも、日本画では横山大観、菱田春草、竹内栖鳳、上村松園、伊東深水などの作品の他、漆工の白山松哉、竹工の飯塚琅玕斎、彫刻の佐藤玄々などの作品も展示しています。正月にふさわしい、吉祥をモチーフとした作品もご紹介します。新春のひととき、清爽な美術品の数々をご鑑賞ください。

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